知的財産法・倒産法実務をリードしてきた片山英二先生の古稀を記念し,
学界・実務界気鋭の研究者・実務家57名が執筆した珠玉の論文を収録。
両法の最新動向に鋭く迫る論文集。
片山英二先生の古稀を寿ぐ~はしがきにかえて
古くから「光陰矢の如し」,「光陰逝水の如し」と言いますが,月日の過ぎるの
は実に早いもので,つい先日片山先生の還暦記念論文集『知的財産法の新しい流
れ』を献呈したと思っておりましたのに,一瞬にして10年が過ぎ去り,もう古稀
記念論文集を献呈することとなりました。
還暦記念論文集の「はしがき」でも述べたことですが,片山先生は,単に知的財
産法分野での泰斗というだけではなく,倒産法分野でも著名な弁護士であり,そ
の他にも渉外法務,会社法務全般の分野で大いに活躍しておられます。知的財産
法は,多くの法律によって成り立っている社会の歯車の一部ですので,知的財産
法の一本足打法ではなく,マルチな仕事をしていることにより,知的財産法のこ
ともより深く知ることができるのであろうと思います。多方面の法分野で活躍し
ておられる片山先生は,クライアントからすれば実に頼もしい弁護士であろうと
思います。知的財産法の専門家から見ますと,マルチな才能を遺憾なく発揮され
ておられる片山先生は驚嘆の限りであり,なぜそのような活躍が可能となるのか
,知りたいものです。
片山先生は,従来から存在する化学,電気,機械分野での特許事件は勿論,バイ
オテクノロジー,半導体,IT等の先端技術に係わる特許事件を多く扱われ,特許
以外でも商標,著作権,不正競争防止法の分野でも大いに活躍され,また多くの
国際事件にも関与されておられます。今や片山先生を知的財産弁護士と呼ぶこと
はおこがましいことですが,私の専門である知的財産法分野からみれば,まさに
知的財産訴訟の分野でのスーパースターのような存在です。
片山先生は,超ご多忙の中,多くの論文も公表され,学界の中でも大きな存在と
なっておられます。それ以外にも,官庁をはじめ,各種委員会・研究会等にもご
参加され,獅子奮迅のご活躍です。どうして執筆時間等を捻出しておられるのか
,不思議です。
片山先生と私とは非常に長いお付き合いですが,凄腕弁護士とは思えないような
温和な先生であり,先生の怒った姿は一度も見たことがありません。おそらく片
山先生がクライアントの絶大な支持を受けておられ,また多くの方から好かれて
いる理由の1つに,この片山先生のご人格があるのではないでしょうか。
古稀とは,唐の詩人杜甫の詩の中で,「人生七十古来稀なり」と詠まれたことに
由来します。しかしながら今の世の中,70歳は決して稀ではなく,むしろ平均年
齢をはるかに下回る年齢です(私自身も既に75歳になってしまいました)。我ら
が敬愛して止まない片山先生は現在もバリバリの現役ですので,今の先生に申し
上げることではないかもしれませんが,今後ますますお元気で,いつまでも我々
の導きの星で頂けるように,一同願って止みません。
2020年9月
東京大学名誉教授
日本学士院会員
中山 信弘
第1編 知的財産
進歩性判断と動機付け
「除くクレーム」及び新規事項の判断に関する一考察
特許紛争の一回的解決と特許法167条の「同一の事実及び同一の証拠」
知財高判平成28年9月28日平成27年(行ケ)第10260号〔ロータリーデ
ィスクタンブラー錠及び鍵事件〕を題材に
特許権侵害訴訟における紛争の一回的解決と当事者間の公平
特許権の存続期間の延長登録
均等論の国際比較
公用発明(公然実施発明)と進歩性について
用途発明の特許性―技術思想アプローチの立場から
拘 束 力
特許異議の申立てと特許無効審判の活用
延長された特許権の効力
職務発明制度のあり方について
医薬・化学発明における発明者の認定基準
AI関連発明の特徴と将来的課題―進歩性,開示要件,発明者
特許権による差止請求権の行使と権利の濫用について
均等論に係る判例とその展開について
再間接侵害の概念とその成否に関する一考察
黙示の実施許諾
職務発明に関する一論点(超過売上げの割合・その2)
いわゆるFRANDの抗弁について
審決取消判決の拘束力
―知財高判平29(2017)・11・21判決LEXDB25449060傍論の検討―
審決取消訴訟の紛争解決機能強化に向けて
インダストリー4.0と特許制度:特許権再考
行政過程としての特許権付与手続
複数人が関与する実施による特許権侵害
侵害立証のための書類提出命令とインカメラ手続
PBP最高裁判決後の裁判例の展開
不当利得返還請求訴訟における実施料相当額の認定
査証制度について
ヘルスケア分野における個人を起点とするデータ活用
特許法による医療関連発明の保護について
特許製品以外の物に関する消尽論
特許明細書・出願過程における虚偽の開示の取扱い
特許法102条1項にいう権利者製品の範囲についての再論
―令和2年2月28日美顔器事件知財高裁大合議判決を契機として―
共有特許と損害賠償
新規性,進歩性の判断における刊行物に記載された発明の認定について
先使用権の要件効果の解釈のあり方―「発明奨励説」からの検討―
第2編 倒産関係
新日本グローバル株式会社の民事再生手続
破産と事業譲渡
変更更生計画における新たに出資をした株主と更生債権者との優劣
―村本建設の想い出と1つの意見書
法的再建手続下の企業における各機関の関係(コーポレート・ガバナンスの視点から)
中小企業経営者と地域金融機関の関係についての一考察
(疑似資本投資家としての貸付先に対する積極的スタンスへの期待)
ゴルフ事業革命の同志として
倒産処理実務の革新―20世紀末を挟む20年
倒産とライセンス契約~ライセンサー破産における保証条項の効力を中心に~
倒産手続におけるスポンサー選定等の経済合理性
病院の再生と控除対象外消費税
会社更生手続の進化と多様性
零細な事業者の民事再生申立て~少額再生手続の制度設計
DIP型会社更生への取組みについて
DIP型会社更生手続の事業管財人の経験を通して
フェニックス~ゼネコンの会社更生
日本の金融危機から学ぶもの
吸収分割に対する否認権の行使
破産法104条と破産配当額の超過
日本航空の会社更生事件を通して
Japan Airlines
― Eiji Katayama and the International Restructuring of Japan’s National Airline
日本航空会社更生事件―片山英二と航空会社の国際事業再生
片山英二先生略歴・主要著作目録